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山登りの手引き

1. 山登りの意義

山登りで得られることは数多くある。
達成感を感じることができる。自然を知り、味わうことができる。体調を整え、体力をつけることができる。そのほかにも、緊張感や非日常性、旅情や明日への活力を上げる人もいる。野生を感じ、原始へ帰る気がする人もいるかもしれない。

しかし、山の中を歩くということは多かれ少なかれ、ケガや生死に関わる危険がつきまとう。たとえ、ハイキングであっても思わぬ危機に見舞われることがあり、山行が本格的になればなるほど危険性は増していく。そこでは計画と実行の違いにおける修正や応用、天候や状況の変化に対する決断や選択、パーティーを組んだときの協力や分担、などの習熟が必要になってくる。

したがって簡単な山行の場合でも一つ一つの行動の意味を積極的に意識し、どんなことが起こる可能性があるかという想像力を養うことが大切だ。小さな試練を乗り越える経験を積む中で、いつ来るかわからない大きな危険に対しても冷静かつ的確に対処できる自信を持てるようにすることが、山登りを訓練という視点で見た場合に一番大事なことだと考えられる。


2. 目的と計画

山行を計画するには先ず目的を明確にすることから始まる。
何を楽しみ、何に挑戦するのか。そのためにはどの山を選び、どのような行程を取るのか。それにはどんな装備が必要で、食料はどのくらい用意すればいいか。というふうに具体化していく。小屋泊まりかテントか、エスケープルートや避難場所の有無なども全体を大きく左右する条件となる。最悪の状況を最小の装備で切り抜けることも考えなければならない。それらのイメージができなければ、計画を縮小するべきである。特に初めての山域については、情報を集めて慎重に計画しなければならない。

行程を予測するとき、手軽なものとしてはY社やT社の解説付き山岳マップが市販されているので参考にすると良い。コースの時間や情報も信用できるし20mの等高線も入っているので、一般登山道を歩くだけなら大いに役に立つ。時間については、普通の脚力の壮年3人連れが各々10kg以下の荷物を背負った場合の実地調査、となっている。大体の目安としては1時間で登り標高300m、下り500m、平坦地で水平3kmである。荷物が20kgを超えたらその半分近くで見積もったほうが良い。それに休憩時間を加えたり、体力不足者の存在や体調不良者の発生などを考慮して決めていく。また、登山道の様子はすぐ変わるので、直前の情報は現地の山小屋などに聞くと良い。なお山での行動は夜明けから午後は遅くても4時頃まで、日が短い季節は3時頃までに終わらせることが望ましい。


3. 装備

登山用具は時代と共に軽く丈夫で使い易くなっているが、必要最小限+αが原則である。背負って移動するからには持ち過ぎは禁物だが、装備が足りなければ行動が大幅に制限される。装備は使いこなせないと意味がないが、装備以上の行動ができるようになることも目指したい。

服は濡れと寒さに対する対策が全てで、ウールと化繊の使い分けが有効、綿、麻、絹は余り良くない。雨具はセパレートの防水加工のもので、透湿性や保温性があれば更に役に立つ。ザックの中身は種類ごとにビニール袋に分けて防水し、パッキングは重いものを上にした方が背負い易い。あとはバーナーや食器、スパッツやストックなど必要に応じて追加していく。その他の必需品はライトと電池、水筒、非常食、救急品、タオル、手袋。靴は大事だが、厳冬期や積雪以外は、しっかりした紐締めのものなら何でも良い。ただし、靴下はウール製がお勧めだ。テントはドームに限るが、シュラフはダウンでなくても良いものがある。


4. 実践

とにかく定期的に出かけなければ訓練にはならない。
また、自分で計画を立てることが大事なので、ただ人に付いていっているうちは向上しない。パーティーで行く場合でも、みんなで計画をすりあわせることで様々な予想と対応のシミュレーションが深められる。

少し慣れてきたら地形図を併用しよう。25000分の1から実際の山の地形を読取るのは思ったより難しく、入り組んだ尾根と沢の判断には熟練を要する。コンパスも磁鉄鉱の影響を受けることがあるので、周辺を動き回って針が振らつかないことを確認する必要がある。霧で視界がなくなったときには、それまで歩いてきた地形の記憶を地図に重ねて判断しなければならない。なだらかな起伏になると、なおさら記憶があいまいになるので注意が必要だ。登山道の樹林にはリボン、岩には丸印のペンキで目印がついていることもあるが、川を渡渉して対岸に踏みかえる所などは非常に判りにくい。それでも経験を重ねることによってカンが働くようになる、ということも事実である。


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